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「感動しない」と言った学生の頃のお話

人生の中で感動する瞬間を何度味わえるかが結構大事なのだと思いますが、それを美術やデザインの作品で感じとることができるのは幸せなことだと思います。もちろん、ある人にとっては音楽であったり、映画であったり、料理であったり、スポーツであったりするかもしれませんが。

さて、今でも忘れられない私の経験があるのですが、私が美大に通っていた頃にとある友人と会話した時のこと、深夜のファミレスで「感動する」ということについて語ったことがありました。その友人はいつも冷静で、論理的で、当時の私からしたらそういうところがカッコイイな、なんて思っていました。

それで、私はある著名なデザイナーから聞いた話として、「テーマパークで斜に構えて冷めてる人よりも、思いっきり楽しんだ方が良い」という話を友人にしました。
それを聞いた友人は「それはレベルが低い」と言うわけです。もう10年以上も前の話ですので、どうしてそれがレベルが低いという話になるか忘れてしまったのですが、「冷静に批判的に物事を常に分析するから、そうそう感動なんてしないし、そもそも感動なんてしない。」というような話を友人がしたんだと思います。(私の記憶違いかもしれませんが)

それを聞いた当時の私は、おおカッコイイと思ったわけです。まあよくよく考えてみたら、20歳そこそこの若者がよくも言えたなと今では思うのですが、当時は私もデザインで世界を変えてやるくらいにとんがってましたので、そうか、簡単に感動していてはいけないな、常に批判的であれ、のように変に腑に落ちてしまったわけです。

そして、ある日の大学でのゼミの授業の始まりの時に、先生にそれぞれ順々に自己紹介をすることになりまして、私の番になり「私は感動しません」というようなことを言ったわけです。

どうなると思いますか。

めっちゃ怒られました。

そりゃそうですよね。デザイナーを志す人が感動しないのであればどうして人を感動させることができるのでしょうか。

最近感動した話

最近、「ボローニャ国際絵本原画展」という世界中の絵本の原画のコンクールの入賞作品が展示される展覧会に行きました。
そこに展示されるのは、世界中の絵本画家の絵なのですが、本当に素晴らしいものばかりでした。

心が震えましたし、ドキドキもしました。紛れもなく感動したんです。

「ボローニャ国際絵本原画展」は毎年開催されますし、私も何度か足を運んだのですが、今回は特に感動しました。
今回が特に素晴らしい作品が多かったのかというと、たぶん毎回素晴らしいのだと思います。

変わったのは私でした。
最近、私自身が、絵本のような世界観の絵を描くようになったからというのもあるかもしれませんが、ただ作品を純粋に美しいと思えたのです。

↑ 私の最近のイラストのスマホケース

感動するまでの距離

何かの感動的な作品や出来事に向かい合ったとき、固定観念や周りを気にする気持ちが、ノイズとして美しさとそれを感じる心の間に入り込んできます。

どうしたらカッコイイと思われるだろう。どうしたらわかってるやつだと思われるだろう。そんなことをどこかで考えてしまうのです。でも本当は、最短距離で心に届いた方が感動するに決まっているのです。

例えば、子供の絵にはそれがありません。だから自由に描くし面白いんだと思います。

感動しないと言っていた学生の頃の私は、本当は感動していました。だけどそう言った方がカッコイイと思ったからそう言ったんだと思います。

それはもったいないことなんだな、と今は思います。

難しく考えないで、ただ目の前にあるものに感動する。子供の頃にはできていたことが、学生の私はできなくなっていました。

海賊王を目指して

その時からしばらくたった今、いつか人生が終わるということを若い頃よりも意識するようになり、

いろんな意味で諦めがでてきて、当時考えていた周りにどう思われるかとか、世界一とかそういうことはもうどうでもよくなってしまって…

なぜならそれを考えようが考えまいが、目の前の仕事に最善を尽くすことには変わらないので、考えても無駄だという結論がでてしまったのです。

それと当時は、いずれ海賊王になる男ではないですが、いずれ世界一になる男と思っていると自分がこの世界の主人公になったような気分でいられたのだと思います。今はもう海賊王になりたくないです。海賊はイケないことなんで。

例えば今なら、お金を払って、手に取って普段から使いたくなるようなデザインをする、ただそれだけです。

「これを手に取って普段使いたいと思うか?」そう自分に問いかけると、未来の自分に自己陶酔している場合ではなくなって、ああでもないこうでもないと考えるしかなくなります。

テーマパークで思い切り楽しむことができるかというのは今も自信はありませんが、少なくとも自分の気持ちに正直でありたいと思うのです。

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トキトマデザイン

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トキトマデザインの代表です。デザイナー兼 WEBサイト運営 兼 バイヤー。現代美術とデザインと釜玉うどんが好き
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