「高い」と聞かされたワインの方が美味しく感じてしまう不思議

ワインは、ブドウから造られるシンプルなお酒です。しかし、同じワインであっても1本100円というものから1本数百万円を超えるものまで、さまざまなタイプのものがあります。

そのため、多くの人がそれ自体の品質の善し悪しではなく「価格」の違いで、味わいの善し悪しを決めるという側面もあるようです。

以前、カリフォルニアで神経経済学をベースにした研究が行われたのですが、非常に興味深い結果が出ました。一体、どのような研究だったのか、詳しく解説していきましょう。

ワインにおける経験効用

冒頭でお伝えした通り、多くの人はワインの味を「価格」で飲む傾向があります。しかし、中には「それは妄想であり、実際に私たちはじっくりと味わっている」と反論する方もいるでしょう。

実験を行った研究チームは、「経験効用(それを経験したときに感じる効用)」という用語を取り上げ、特定の商品(ワイン)の経験効用がマーケティング(付加価値などの有無)によって変わるのか調べました。

実験では、fMRIという脳の神経活動がリアルタイムで記録できる装置で被験者の脳活動を調べ、5種類のカベルネ・ソーヴィニヨン(赤ワインで使用される代表的なブドウ品種)を味わってもらいます。被験者には、事前にワインの小売価格が伝えられ、それをじっくり味わった時の好き嫌いを判断するように指示されました。

「高いワインであれば、美味しく感じるように造られているのでは?」と思うかもしれませんが、実験には面白いひねりが加えられていました。

実は3種類のワイン


前述したように、被験者には5種類のワインが用意されているのですが、実は3種類しか用意されていませんでした。つまり、内訳はこうです。

・5ドルのワイン〈ワインA 正しい価格〉
・10ドルのワイン〈ワインB 本来は90ドル〉
・35ドルのワイン〈ワインC〉
・45ドルのワイン〈ワインAの偽りの価格〉
・90ドルのワイン〈ワインBの本当の価格〉

さて、結果はどうなったのでしょうか。

味覚と価格

5ドルのワインAと偽りの45ドルのワインA、90ドルのワインBと偽りの10ドルのワインB。被験者は、予想通り、高額な小売価格を提示された方を美味しいワインとして選んだのです。当然と言えば当然かもしれません。また、面白いのが脳の神経活動です。

私たちは、快楽などを感じたときに報酬回路という回路の神経活動が活性化しますが、高く価格が提示されていたワインを飲んだとき、その報酬回路の活動が盛んになっていたことも分かりました。被験者の体験には個人差があるため、必ずそうだとは言いきれないでしょう。

しかし、私たちは価格など、先に伝えられている情報により期待値が高まり、それが味の感じ方に変化を及ぼしていることは間違い無さそうです。

ブランドの力

この実験結果から分かることは、私たちはブランドや価格など、そういった情報に高い期待値を持ち、それを体験した時に喜びを感じてしまう可能性がある、ということです。

今回はワインでしたが、これがアート作品だと考えましょう。絵画を見たときに、仮にその絵が著名なアーティストの作品であっても、「美大生の描いた作品です」と言われれば、よくできているな…とは思いながらも、満足度でいうと低くなる人がでてくる可能性はないでしょうか。

一方で、有名アーティストの作品です、と予め伝えられたとしたら、「こんなすごいものを見られている。これは、素晴らしい体験だ」というバイアス(先入観)がかかり、よりその作品が輝き、感動的な体験となる人がいるかもしれません。

プロが見たら?

とはいえ、ワインの実験を第一線で活躍するソムリエやワインメーカーが体験したら、また違った結果になっていたでしょう。

「45ドルのわりには、造りが荒い」とか「10ドルのわりには、こだわって造られている」など、違った側面で善し悪しを判断するかもしれません。

要するに、その分野において詳しく無い方に感動を与える、または注目をさせる場合、「ブランド価値」というものをしっかりと築いておかないといけない、ということにも繋がってくるのではないでしょうか。

逆に、とある分野に詳しくなり、本物が分かる目(耳、舌、嗅覚など五感すべて)を養いたいのであれば、徹底的に勉強をして、バイアス(先入観)を取り除いてくしかありません。

何かのジャンルにおいて、価格やブランドに引っ張られていることはないでしょうか。何事も疑ってかかる必要はありませんが、自分の好みと照らし合わせて物事と対峙してみる時間も必要なのかもしれませんね。

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