幸せのなんちゃらレンジャー

その日も教室はパリピ状態。

まるでカラオケボックスか?パチンコ店か?工事現場のような?
爆音が毎日響いていました。

しかし突然・・・ハッ!と騒音が止まった。

ふわふわと舞った教科書は、教室の中央あたりに着地。

教科書を投げたのは?

70歳くらいの老先生でした。

それはあまりにクラスが騒がしく、誰も授業を受けようとしない状況に
先生がイラだった結果の行動だと誰もが瞬時に理解しました。

クラスメイトの視線が一斉に先生へと集まる。
すると先生は肩を震わせながら言いました。

それを聞いたクラスメイト達は同時に「ぷぷっ」と吹き出す。

お調子者の野球部員が我先にと言う。

それを聞いたクラスメイト達は大爆笑。

 

 

「物を粗末にするな~」とか「うぜ~」とか

「意味わかんね~」とか「体罰やめろや~」とか

「自分も目立ちたい!」という人達が、

競い合うように次々と強い言葉を口にし続けた。

 

 

年老いた先生は反論もせず、唸るように言いました。

「最近の若者は恵まれすぎているから

本当の幸せがわからないんだ!」

 

 

が・・・もう誰も聞いていなかった。

 

 

クラスメイト達は野球部員がはじめた

フガフガと喋る先生のモノマネに夢中になっていたからです。

先生はそれ以上なにも言わず、教室の真ん中に落ちた教科書を自ら拾いました。

 

その光景を見てニヤニヤと笑うクラスメイト。

これがそんなに面白いことだろうか?

 

先生は、静かな声で誰の耳にも届かない授業を続けました・・・

                                                                     

 

 

「名前が書ければ入れる」という底辺高校なのですから、

そもそも授業が成り立つわけが無かったのです。

 

みな夢も希望も理想も倫理も何も無い。

「ただ酸素があるから呼吸してるだけ」

人の話を聞けたり向上心がある人間は、こんな低い場所には居ない。

 

 

ただ・・・・この先生の主張・・・

私には何となく・・・・わかる・・・・ような気がした。

 

思い出すのは子供の頃の話。

 

私は『鉄くず』『つまようじ』『石』で遊ぶのが大好きでした。

オモチャはなかなか買ってもらえなかったので、

そういうモノで遊ぶしか無かったんです。

 

 

それもこれも両親が金が手に入ると、

無計画に洗いざらい使ってしまう病気でしてね。

 

例えば「家の電化製品は常に最新式なのに、今日食べる物がない」

そんなわけのわからない家庭で育ったからです。

両親の幸せは『高い車や電化製品』に囲まれることでした。

 

それは他人からお金を借りてでも、

どうしても手に入らないと我慢できないほどだったのです。

 

見栄と欲望にあふれた家庭。

 

そんな我慢が出来ない両親のため、私は欲しい物をずっと我慢していました。

 

でも本当は周りの友達が持っているような

『なんちゃらライダー』とか『なんちゃらレンジャー』とかのグッズが欲しい。

とそう思っていました。

 

 

でもある日、気づいたのです。

「ゴミ集積所にはオモチャが捨てられてることがある!」ってね。

 

そこでヒマがあればゴミを漁り・・・・

ついに『なんちゃらレンジャー』とかの人形を拾ってきたわけです・・

ちょっと汚れてたり腕がとれてたりしてるけど別に問題は無い。

遊ぶ・・・・ああっ楽しい!

そりゃぁ楽しいですよ。

だって大好きな『なんちゃらレンジャーの人形』なんですから・・・

 

 

でも・・なぜか・・・・遊んでいるうちに・・・・

 

なにか・・・すこしづつ違和感を感じるようになりました。

 

 

そしてしばらくすると・・・

その違和感は「つまらない」になってしまった。

なんでだろうか?

 

あんなに欲しかった人形なのに?

 

 

わたしはこの『楽しくない理由』をずっとずっと考えました。

 

そして気づいたんです。

自分が入る余地があるほうが面白い。

自分が創れる余地があるほうが面白い。

 

モノがあることで窮屈になることもあるらしい。

子供なりにそういうことを思いました。

 

『モノ』があることが幸せだとすると、

ナニカを失った時に不幸を感じすぎてしまわないだろうか?

 

幸せをつくったり、見つけるのがヘタにならないだろうか?

 

・・・・・・・・・・・・・

 

雨上がりの水たまりに手を入れると温かい。

「幸せだなぁ」と思う。

それくらいで良いんだと思う。

 

なにも無くていい。

なにを失っても大丈夫。

 

きっと幸せはどこにでもある。

 

おしまい

 

 

この記事を書いた人

ハルオサン

「社会の闇」に飲み込まれ続け、ヤケクソでブログを書き始めました。

 


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