カードが"骨格"になる。 革の「ベロ」で固定する。 新発想、ミニマルウォレット
カードを骨格にした薄く小さい二つ折り財布

スマホ決済が中心になり、大きな財布は持ち歩かなくなった。でも、いざという時の現金や、お気に入りの店のポイントカード、身分証は手放せない。そんな現代人のために市場には小さな財布が溢れているけれど、本当に『これだ』と思えるものに出会えているでしょうか。
この二つ折り財布の大きなテーマとして「薄くて小さくても使いやすく」というのがありました。
「外出時はできればスマホで完結させたい」という方が多いこのキャッシュレス時代に財布が薄い、というのはとても重要なポイントです。
小ささを追求するあまり収納力が犠牲になっていたり、結局パンパンに膨らんで不格好になったり…。
私たちTOKITOMA DESIGNが長年抱えていたこのジレンマへの答えが、この新しい財布です。単に小さいだけじゃない、毎日をスマートにするための『発明』を詰め込みました。


1.6cmは収納状態での厚さです。未収納であれば更に薄く1.2cm程度となります。
形をきれいに保つ
「財布を薄くすればするほど、革は柔らかさを増し、中身が少ないと形が崩れてしまう。この大きな壁にぶつかりました。芯材を入れれば厚みが出てしまう…。
試行錯誤の末にたどり着いたのは、『無いなら、すでにあるものを利用すればいい』という逆転の発想でした。
財布に必ず入っているプラスチック製のカード。その『硬さ』を、財布そのものの骨格として活かすのです。このアイデアが、中身の量に左右されない、凛とした美しいフォルムを実現する鍵となりました。

薄さを実現しながらもきれいなフォルムを保つことにも成功しています。
上の写真のような、お札3枚、小銭5枚、クレジットカード3枚といった収納量が少ない場合でも、このアイデアは機能します。

コンパクトな財布は、パンツの後ろポケットやスーツの内ポケットに入れておく方がほとんどです。
ですから、薄くて丈夫で型崩れしにくいように、1枚カード入れの位置やサイズ、革の厚みについてはシビアな目線で何度も検証を重ね、最終的にこのようなカタチになりました。

薄さに加えて試行錯誤を重ねたのが小ささ、コンパクトさです。
横幅はほぼカードと同じ長さ、縦幅はカード、お札、小銭を収納するにあたって必要最低限の長さにしてあります。

カード入れの横の縫い代は、2.5mm幅に設定しています。
これ以上狭くすると強度に問題が生じますし、また、広くすると見た目のバランスが崩れるので、これが最良のバランスだと思います。

また、革の漉きもあいまってさらに薄くしています。もちろん、丈夫さと雰囲気を失わずに。
このように、薄さと小ささの両方について試行錯誤したこの財布は、二つ折り財布としては極小レベルと言ってよいかと思います。

この二つ折り財布は、単に薄くて小さいだけではありません。使いやすさと便利さについてもアイデアを盛り込んでいます。
最後に悩んだのが、どうやって財布を閉じるか、ということでした。ホックやボタンは簡単ですが、どうしても厚みが出てしまい、一点だけ膨らむ形が許せなかったのです。
何より、主役であるイタリアンレザーの美しい表情を、無機質な金具で遮りたくない。
『革は、革で閉じるのが一番美しい』
そんな想いから生まれたのが、この『革のベロ』です。 しなやかで丈夫なベロを、もう片方の革にそっと差し込む。使い込むほどに手に馴染み、開け閉めの所作さえも愛おしくなる。そんな光景を思い描きながら設計しました。
その中で注目していただきたいのが、金具を使わず「革のベロ」を差し込んで財布を閉じる、という仕組みです。

革を2枚重ね縫い合わせた丈夫な革のベロを、閉じた先の受けの部分に差し込んで固定する、という発想に至りました。
開発のストーリー
試作でたどり着いた、最適な「受け」の構造

試作を繰り返すうち、革のベロをスムーズに受け止める「差し込み口」の構造が非常に重要だと気づきました。そこで、受け側の革には裏側に革を追加して二重にして補強を施し、差し込み口のスペースが常に安定するように設計しました。これにより、いつでも心地よく、確実な開閉ができるようになりました。
差し込むベロの幅を小さくして、余裕を持って差し込める形に

「ベロ」の最適な幅を見つけるまでには、試行錯誤がありました。当初「しっかり固定するには、幅広のベロが必要だ」と考えていましたが、それでは受け側の差込口にぴったりの位置で差し込まないといけないために、開閉のスムーズさに欠けるという課題に直面しました。
そこで思い切ってベロの幅を少し狭めてみたところ、財布全体の構造がしっかりしているため固定力は全く問題ありませんでした。むしろ、受け側との間に生まれた適度な余裕が、よりスムーズな抜き差しを実現してくれたのです。
新しい開閉方法

内側にあるベロを親指で押さえて角度をつけ、受け口に差し込みます。
最初に革が固い場合も、使っていくうちに形が馴染み、入れやすくなっていきます。
金具でとめていないので、パチっという音がなく静かに開閉できるのも特長です。
開くときは、何も気にせずただ開くだけです。
カード入れの構造

6枚カード入れの設計についても、使いやすさと便利さを意識して設計しました。
上の写真を見ていただけると分かりますが、カードの左右上下に一切の(余分な)空白がありません。

これはコンパクトさを追求した結果であり、このようにすべての箇所で細部を詰めることで実現しています。
カードはまるでジグソーパズルの1ピースのようにすぽっと収まってくれます。
しかし、これだけピッタリに収まっているのを見ると、カードが入れにくいのでは?と思う方もいるかもしれませんが、大丈夫です。

革がほどよい柔らかさなので、このようにくっと曲げてすっと簡単に出し入れすることができます。
よく使うカードは「一枚カードポケット」へ


1枚カードポケットは、閉じたまま出し入れすることも可能です。

小銭入れも、ファスナー等の金具類を使わないようにしました。
写真の、逆さにしても曲がったクセのついた広々とした革のフタが、小銭を簡単に落とさない構造になっています。

もちろん、強く振ったりすると落ちてしまいますが、普通に使用する限りはしっかり脱落を受け止めてくれる、便利な革のフタです。


収納については、最低限の容量を考え提案しています。
カードは1枚入れと6枚入れにそれぞれ入れることができ、小銭は15枚まで収納できます。(推奨は12枚)
もちろん、長財布など収納力の高い財布と比べると容量は落ちますが、キャッシュレスを志向するアナタにとってはむしろ十分な容量ではないでしょうか。

コバ処理と仕上げ
さらに、この財布は細部の仕上げにも徹底的にこだわっています。
革の断面(コバ)は一つひとつ丁寧に処理を施し、滑らかで艶のある美しいラインに仕上げました。切りっぱなしの荒さを感じさせず、握った時の手触りにも上質さが伝わります。

また、革の裏面(床面)にも磨きをかけ、毛羽立ちを抑えることで高級感を引き立てています。普段は見えにくい部分まで整えることで、毎日手にするたびに小さな満足を感じていただけます。
これらの処理は手間とコストがかかる作業ですが、このシンプルな財布だからこそ「仕上げの美しさ」が何よりも重要だと判断し、職人が一点ずつ丁寧に仕上げました。外側も内側も、余計な装飾ではなく仕立てそのものの完成度で勝負する財布です。

商品イメージ


革について

この財布に使用した革は、イタリアの名門タンナー Lo Stivale(ロ・スティバーレ)社が手がける、植物タンニンなめしのショルダーレザー、ブルガロという革です。

バケッタ製法と呼ばれる伝統的な技法で、革の芯までじっくりとオイルを浸透させており、きめ細かく滑らかな表面(銀面)と、ハリ・コシのある質感が特長です。
使い始めはマットな表情ですが、日々手に触れることで革内部のオイルが艶となって現れ、色に深みと透明感が増すのも特徴です。
手にするたびに変化を感じることができ、エイジング(経年変化)を存分に愉しめるレザーです。

サイズ:(縦)88 mm × (横)92 mm x (厚さ) 12mm ※収納内容により変化します。
収納時厚さ:16mm (カード7枚お札10枚小銭10枚収納時)
二つ折りの状態でのサイズです。
重さ:54g
素材:イタリアンレザー「ブルガロ」(牛革)
推奨収納容量: カード…7 枚、紙幣…10 枚、小銭…12 枚
収納可能容量: カード…7 枚、紙幣…15枚、小銭…15枚
カラー:ネイビー、ブラウン、イエローキャメル
生産国:日本

カラーはどれも、洋服や鞄などに合わせやすいものをご用意しました。
定番のネイビーは、持つ人に知的で落ち着いた印象を与えてくれる、深みのあるカラーです。
ブラウンは、みなさんがイメージする"THE・革"ともいえる色で、革の風合いを最も楽しめる、上品なブラウン系です。
そしてイエローキャメルは、明るい色なので強めにアイテムを主張したい方におすすめで、経年変化(エイジング)で美しい飴色へと育て甲斐があります。


最後に少しだけ、この財布が完成するまでの過程や想いについてお話させていただければと思います。
製品紹介でも少し触れましたが、この財布は単に「薄くて小さい」だけではありません。

・使う楽しさ、便利さを感じられるように
・所有欲を満たすアイテムとして
・使用する際の所作を美しく魅せられるように
・時と共に味わい深く愛着がわくように
これらの想いも込められています。
私自身、これまで制作してきた財布については、ひとつひとつ真摯に向き合い、納得のいく商品をユーザーの方にご購入いただいてきたと思っています。
そして最近では、より自分のアイデアを正確に具現化したい、革の良さ、特徴をできうる限り引き出したい、という想いも強くなってきました。
そこで今回は、以前から交流のあった東京の革職人の方に、当プロジェクトに協力していただくことにしました。

革の選定、裁断、組み立て、縫製、厚み、コバ処理(革の切れ端の処理のこと)、漉きなど、ほぼ全ての工程において納得がいくまで、職人の方と何度もアイデアを出し合いました。

特に漉き(革を薄くする技術)については、機能性や見た目の美しさに直結するため、0.1mm単位で何パターンも用意してもらい、折り曲げた感じや手にとった感覚を比較し、最適なバランスを決定しました。
そして、最終的に決定した製品の生産については、日本国内の専門企業と連携して行います。
創業50年以上の歴史を持つ国内の皮革服飾メーカーの実績あるプロフェッショナルが制作いたします。
こちらも熟練の技術者による丁寧な手仕事で一点ずつ仕上げ、皆様のお手元に責任をもってお届けいたします。

これまでトキトマデザインが企画してきた財布とは毛色が異なり、私自身、新たな取り組み・チャレンジとなりました。
そのぶん苦労したことが多々ありましたが、最終的には、改めて"モノづくりの楽しさを再確認でき、これからも真剣に、楽しく取り組んでいきたい"と感じました。
以上となりますが、最後までご覧くださいましてまことにありがとうございました。当プロジェクトをどうぞよろしくお願いいたします。
