オーケストラのシンバル担当って楽なんじゃない?って思ったら読むブログ

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オーケストラの奥で輝く黄金の円盤

オーケストラの演奏会に足を運んだ際、ぜひ舞台の最後列へと視線を向けてみてください。そこには、眩い黄金色に輝く大きな円盤を手に、静かに精神を研ぎ澄ませている奏者の姿があります。彼らこそが、音楽のクライマックスを華々しく彩るシンバル担当の演奏家です。

オーケストラが奏でる旋律が最高潮へと達し、ここぞという場面で響き渡る「ジャーン!」という鮮烈な音色。その一撃は、聴き手の感動を一気に増幅させる魔法のような力を持っています。しかし、その輝かしい一瞬の裏側には、私たちの想像を遥かに超える奥深いドラマが隠されているのです。

出番が少ないから楽という大きな誤解

舞台上のシンバル奏者を観察していると、ある事実に気づくかもしれません。それは「あの人はずっと座ったまま、出番を待っているだけではないか」ということです。実際、曲目によっては最初から最後まで通して、たった一回しかシンバルを叩かないことさえ珍しくありません。

こうした様子から、「座っている時間が長いなら、さぞかし楽な仕事だろう」と誤解されることもありますが、それは大きな間違いです。実はシンバル奏者こそ、オーケストラの中で最も過酷なプレッシャーと戦っている一人なのです。

彼らは待機中、決してぼんやりと過ごしているわけではありません。頭の中では「1、2、3、4……」と、指揮者が刻むテンポに合わせて、何十、何百という膨大な数の小節を寸分の狂いもなく数え続けています。もし数え間違え、静寂の中で一発でも誤爆をさせてしまえば、それまでの名演は一瞬で台無しになってしまいます。絶対に失敗が許されない「究極の一打」のために、極限の緊張感を維持しながら、彼らはひたすら出番を待ち続けているのです。

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一瞬の響きに魂を込める職人技

シンバルの演奏は、ただ力任せに二枚の金属を打ち合わせれば良いというものではありません。そこには、プロ奏者だけが到達できる高度な職人技が凝縮されています。

まず、標準的な18インチサイズのシンバルであれば、二枚合わせて約3.6キロから4キロもの重さがあります。これを両手で掲げ、狙い通りの音量と音色を響かせるには、相当な筋力が要求されます。さらに、二枚を真正面から真っ直ぐに合わせてしまうと、中の空気が逃げ場を失い、「ポスッ」という間の抜けた音になってしまいます。そのため、奏者は空中でわずかに角度をずらし、こすり合わせるように叩くという繊細なテクニックを駆使しているのです。

音を鳴らした後も、彼らの仕事は終わりません。曲の情感に合わせて、シンバルを高く掲げて美しい残響を長く引き伸ばしたり、反対に自分の体へと素早く押し当てて音を「ピタッ」と遮断したりと、余韻の一粒に至るまで完璧なコントロールが行われています。

シンバルだけを叩く専門家は存在しない

ここで、あまり知られていない事実をお伝えしましょう。実は、オーケストラには「シンバルだけを専門に演奏する人」は存在しません(※注1)。彼らの本来の肩書きは、あくまで「打楽器奏者」なのです。

オーケストラの打楽器奏者は、シンバルの他にも大太鼓や小太鼓、トライアングル、タンバリン、さらにはマリンバやグロッケンシュピールといった多彩な楽器を自在に操るスペシャリストです。一曲の中で、小太鼓を叩いた直後にステージ上を素早く移動し、シンバルを鳴らし、間髪入れずにトライアングルへと持ち替えるといった、アスリートさながらの躍動を見せることも珍しくありません。

つまり、あの黄金の円盤を掲げている人物は、あらゆる打楽器の特性を熟知し、使いこなす音楽界のオールラウンダーなのです。

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次回のオーケストラ鑑賞は舞台の奥へ視線を

「楽そう」というイメージとは裏腹に、オーケストラのシンバル奏者は、重量のある楽器を操る強靭な体力、絶対に失敗できない重圧に打ち勝つ精神力、そして極めて繊細な音の制御技術を兼ね備えた、稀代の芸術家です。

魂を揺さぶるあの「ジャーン!」という響きの裏側には、これほどまでの研鑽と情熱が注ぎ込まれています。次にオーケストラの演奏会を訪れる際は、舞台の奥深くで静かに出番を待つ打楽器奏者の姿に、ぜひ注目してみてください。その一撃に込められた想いを知ることで、音楽の世界をこれまで以上に深く、鮮やかに楽しめるようになるはずです。

シンバル
  • 資料名: シンバル
  • 出典/所蔵: The Met
  • ライセンス: CC0 / Public Domain

【資料解説】
紀元前30年から紀元後364年の古代ローマ時代に制作された銅合金製のシンバル。シンプルな造形ながら、当時の儀式や音楽演奏において重要な役割を担ったであろうこの楽器は、古代の音文化や金属加工技術を今に伝えます。その存在は、時を超えて響く音の力と、当時の人々の生活や感情に思いを馳せる、貴重な手がかりとなるでしょう。

補足事項

  • ※注1: 基本的には打楽器奏者が様々な楽器を持ち替えて演奏しますが、マーラーやブルックナーなどの大編成の楽曲や、一発のシンバルの音色が極めて重要な役割を持つ曲目では、その公演限定で「シンバル専属の奏者」が特別に配置されるケースもあります。

主な参考資料

  • コンサート打楽器専門店 bluemallet(ブルーマレット)商品ページ
  • Reddit コミュニティ "コンサートでの「シンバル奏者」の背景" スレッド
  • Zildjian 公式サイト(A Orchestral Cymbals等) / Sabian 公式サイト(Cymbals 101)

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