ポケットのおやつが世界を変えた!パーシー・スペンサーと電子レンジの誕生秘話

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火を使わずに食べ物をアツアツにする魔法の箱

お弁当や冷凍食品をあっという間にホカホカにしてくれる電子レンジ。現代の生活に欠かせないこの便利な機械ですが、一体誰がどうやって思いついたのでしょうか。

おいしい料理を作る有名なシェフや、食品メーカーの研究者ではありません。電子レンジを発明したのは、軍事用のレーダー開発に携わっていた「パーシー・スペンサー」というアメリカのエンジニアでした。そしてその発明のきっかけは、ほんの小さな偶然の出来事だったのです。

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ポケットの中のチョコレートがすべてのはじまり

パーシー・スペンサーは、独学で電気や数学を猛勉強し、優秀な技術者になったというたいへんな努力家でした。

1945年のことです。アメリカのレイセオン社という会社で働いていた彼は、「マグネトロン」と呼ばれるレーダーシステムの構成部品の実験をしていました。マグネトロンとは、マイクロ波という電波を発生させる真空管デバイスのことです。実験の途中、スペンサーはふと自分のポケットに手を入れて驚きました。ポケットに入れておいたおやつのチョコレートバーが、ドロドロに溶けていたのです。

普通の人なら「服が汚れてしまった」と落ち込んで終わるかもしれません。しかし、優秀なエンジニアである彼は違いました。「火のそばにいたわけでもないのに、なぜ溶けたんだ。もしかして、あの装置から出ている見えない電波のせいか」と考えたのです。

ポップコーンと爆発する卵の大実験

自分の仮説を確かめるため、スペンサーはすぐに行動に出ました。彼が次に装置の前に置いたのは、ポップコーンのトウモロコシです。装置のスイッチを入れると、ポンッ、ポンッと音を立てて、トウモロコシが部屋中に弾け飛びました。火をまったく使っていないのに、です。

さらに彼は、容器に生卵を入れ、そこに電波を当ててみる実験を行いました。いったいどうなるのかと、好奇心旺盛な同僚のひとりが容器の中を覗き込んだその瞬間、なんと卵がボンッと大爆発し、同僚の顔が熱い卵まみれになってしまったという逸話が残されています。

顔中が卵だらけになった同僚にとっては気の毒な災難でしたが、人類にとっては大きな一歩でした。これらの実験によって、「マイクロ波が食べ物の中の水分などの分子を激しく振動させ、その分子が振動することで熱エネルギーが生まれる」という電子レンジの仕組みの基礎が証明されたからです。

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初期モデルは冷蔵庫よりも大きくて重かった巨大な箱

この発見をもとに、1947年に世界で初めての電子レンジが発売されました。レーダーの技術から生まれた調理器具ということで、「レーダレンジ」と名付けられました。

しかし、この初代電子レンジは、私たちがキッチンで使っているものとはまったく違う姿をしていました。一説によれば高さは1.7メートルを超え、重さは約340キログラムもあったとされています。大人が何人も集まらないと動かせないほどの巨大な鉄の箱だったのです。

おまけに価格も非常に高く、当時の値段で数千ドル、一般的な会社員の平均年収に匹敵するほどの金額でした。そのため、最初は家庭のキッチンではなく、豪華客船の厨房や大きなレストランなどでしか使われませんでした。私たちが知っているようなコンパクトなサイズになり、一般の家庭に普及するまでには、それからさらに何十年という月日と、多くの技術者たちの努力が必要でした。

日常のささいな疑問が世紀の大発明を生み出す

電子レンジは、外から火で温めるのではなく、食べ物の中にある水分を電波で震わせて熱を出すという画期的な仕組みを持っています。

パーシー・スペンサーの物語が教えてくれるのは、科学の知識のすばらしさだけではありません。ポケットのおやつが溶けたという日常のちょっとした不思議な出来事を、ただの偶然で終わらせず、「なぜだろう」と追求する心の大切さです。

私たちが毎日当たり前のように使っている便利な道具の裏には、探究心を持った一人のエンジニアの存在があります。次に電子レンジの温め終わりの合図を聞くときは、ぜひこのポケットのチョコレートから始まった不思議な物語を思い出してみてください。


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