世界で一番有名な着せ替え人形の秘密!ルース・ハンドラーが「バービー」に込めた魔法

世界中の女の子たちの心を掴み、そして時折、お父さんやお母さんのお財布をピンチにしてきた世界で一番有名な着せ替え人形。それが「バービー」です。
ピンクの華やかな世界観でおなじみのバービーですが、彼女がどうして生まれたのか、ご存知でしょうか。そこには、アメリカのおもちゃメーカー「マテル社」を夫のエリオット・ハンドラーらとともに共同創業した一人の女性、ルース・ハンドラーの鋭い観察力と、決して諦めない情熱がありました。
今回は、バービー人形が誕生した驚きのエピソードをご紹介します。
紙人形からの大発見!娘の遊びが変えたおもちゃの歴史
1950年代のアメリカ。当時、女の子のおもちゃといえば、ぽっちゃりとした「赤ちゃん人形」が定番でした。女の子たちは、その人形で「お母さんごっこ」をするのが当たり前だと思われていたのです。
しかし、ルース・ハンドラーは娘のバーバラが遊んでいる様子を見て、あることに気がつきました。ルースの著書『Dream Doll』によれば、バーバラは赤ちゃん人形ではなく、大人の女性の姿をした「紙人形」を使って、キャリアウーマンや大学生になりきって遊んでいたと伝えられています。
「女の子は、自分がお母さんになる夢だけを見ているわけじゃない。未来の自分、つまり『大人の女性』に憧れているんだわ!」
ルースの頭の中で、電球がピカッと光った瞬間でした。彼女は、紙のようにペラペラではなく、実際に服を着せ替えることができる、大人の女性の立体的な人形を作ろうと思いついたのです。
ヨーロッパの街角で見つけた運命の人形
素晴らしいアイデアを思いついたルースですが、なかなか理想の形を作れずにいました。そんなある日、家族でヨーロッパ旅行に出かけたときのことです。一説によればスイス、あるいはドイツやオーストリアとも言われる街角のショーウィンドウで、ルースは運命の出会いを果たします。長い脚にファッショナブルな服を着た「ビルド・リリ」という人形を見つけたのです。
実はこのリリ人形、もともとは大人の男性向けのジョークグッズとして作られたものでした。しかし、ルースにとってそんなことは関係ありません。「これよ!私が作りたかったのはこれなの!」と、彼女はこの人形をいくつか買い込み、アメリカへと持ち帰りました。
「大人の人形なんて売れない!」反対を押し切ったデビュー
ルースは会社に戻り、「女の子向けの新しいおもちゃとして、この大人の女性の人形を作りましょう」と提案しました。しかし、マテル社の男性役員たちは首を横に振りました。
「お母さんたちは、自分の娘にこんな胸のある大人の人形なんて絶対に買わないよ」
会議室にいたおじさんたちには、女の子たちの本当の夢がわからなかったようです。それでもルースは諦めませんでした。デザイナーと協力して人形を改良し、ついに1959年3月9日、ニューヨークのおもちゃ見本市で新しい人形を発表します。
人形の名前は、インスピレーションを与えてくれた娘のバーバラから取って「バービー」と名付けられました。
男性たちの予想に反して、バービー人形は発売されるやいなや大きな注目を集め、ヒットを記録していきました。女の子たちは、お母さんの真似事ではなく、自分自身の未来の姿をバービーに重ね合わせたのです。
宇宙飛行士から大統領まで!女の子の夢を叶える多彩な職業
バービーの魅力は、ただおしゃれな服を着ていることだけではありません。彼女の最大の武器は「履歴書の長さ」です。
バービーの職業は、ファッションモデルや看護師から始まり、マテルの発表によれば、現在までになんと250種類以上にのぼると言われています。人類が月に降り立つ約4年も前の1965年には、すでに宇宙飛行士のバービーが発売されていました。その後も、大統領候補、パイロット、ロボット工学のエンジニアなど、あらゆる職業を経験しています。
これには、「女の子はなんだってできる(You Can Be Anything)」というルースの強いメッセージが込められています。どんなに難しそうな仕事でも、まずはバービーと一緒に想像の世界で体験できるのです。
肌の色も体型もさまざま!時代とともに進化する現在のバービー
誕生から長い年月が経ち、バービーも時代に合わせて大きな進化を遂げています。金髪でブルーの瞳、スレンダーな体型という定番の姿だけでなく、現在では肌の色、目の色、髪の毛の質感が異なる何十種類ものバービーが販売されています。
さらに、背が高い、小柄、ふくよかな体型のバービーや、車椅子に乗ったバービー、補聴器をつけたバービーも登場しました。「誰もが自分に似たバービーを見つけられるように」という思いが込められているのです。
2023年には実写映画『バービー』が公開され、報道によれば全世界興行収入が14億ドルを超えるなど、世界中で大きな話題を呼びました。映画の中でもバービーの深い歴史とメッセージがコミカルかつ感動的に描かれ、かつてバービーで遊んでいた大人たちも再び劇場で熱狂することになりました。
ルース・ハンドラーが小さなプラスチックに込めた本当のメッセージ
ルース・ハンドラーは、バービーを通じて世界中の女の子たちに「あなたには無限の可能性がある」という魔法をかけました。ただのプラスチックでできた29センチの人形は、単なるおもちゃの枠を超え、自立した女性の象徴となったのです。
部屋の片隅に転がっているバービーの小さな靴を踏んでしまい、痛い思いをした経験がある大人は数え切れないでしょう。しかし、その小さな靴は、子供たちが「自分がなりたいものに向かって一歩を踏み出すため」の練習用の靴なのかもしれません。
バービーは今日も新しい服に着替え、まだ見ぬ未来の職業に就く準備をしています。ルース・ハンドラーの素晴らしいひらめきから生まれたこの人形は、これからも世代を超えて、大きな夢を与え続けていくことでしょう。